出世をしたければ●●に基づいたものを持て…とは言われていないが。

「出世をしたければ、ボスの猿真似をしろ」
最近どういうわけかこういう言葉をよく聞く。

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以前「ココロノコトワリ」というブログでこんな記事があった。

www.cocokoto.work

記事にもあるが、アメリカのビジネス界で語られている言葉だという。日本だと「あいつ俺の真似しやがって」と否定的になるがアメリカではもはや常識らしい。

男性であればスーツやネクタイや靴など身につけるものをはじめ、カバンや手帳、財布や名刺入れなどの小物までなんでも真似しやすい。
黒(または紺)&グレー派か茶&ベージュ派かに分かれるかとは思うが、基本的にビジネスの世界だと圧倒的に黒、紺、ネイビーが多いので真似しやすいかと思う。さすがにパーソナルカラーがどうのこうのと言ってしまうとキリがないが、基本的に似たような色になるのでそこからさらに似せて行く、という感じなのだろう。
髪型も真似をするということらしい。尊敬する上司がスキンヘッドだったら出世したい部下もスキンヘッドにするということになると思うが…さすがにビジネスマナーとしてスキンヘッドはまずないだろう。

ほうほうなるほどまことしやかにそんなことが言われているのね、と納得していたのもつかの間…。

…ん?

そういえばわたしは女だが、入社してから今の今までずっと上司は男だ。世のOL殿の大半はまだ男性上司なのではないだろうか。
と思っていたら最後にこのように書いてあった。女性の場合であれば…

ボスに好かれれば出世しないわけがありません。というものの、
男性のボスの場合、ヘアスタイルやファッションを女性が真似るのは難しいものです。

しかし、身振りや話し方を真似ても効果的ですので、
まずはそのあたりから始めてみてはいかがでしょうか。

なるほど仕草から始まりあわよくば雰囲気まで似せてくればこっちのモンってわけだ。
わたしは出世欲はないが、どちらかというと「まぁ〜定年までに管理職にギリで上がれたらラッキーかもぉ」というふにゃふにゃなスタンス。なので特別上司の真似をしようとは微塵も思っていないのだが…

今日、会社の人とこのことについて話していたら「いや、似ようと思ってなくても近くにいたら似てくるもんだよ」と言われた。
おっと、これはいけません。今の部署にいる課長に似てきたら「謎の人」になってしまう。

正式な所属はあれど今自分が世話になっているのは全く別の部署なのだが、そこの課長がなかなか強烈な人なのだ。年齢はまだまだ42〜3歳くらいで見た目はもう少し若く、なかなかスレンダーな男性だ。
が、この人がまた風変わりだ。以前は某システム会社でゴリゴリのシステムマンだったのだが、うちの会社に何回か用があって来ていたら某営業支援系の部署の部長からヘッドハンティングされ、システムと全く関係ない仕事をやりつつ現在は課長まで登り詰めたという経歴がある。

そんな彼だがヘアスタイルは白髪混じりのツイストパーマ。しかもうまい具合に均等に白髪がばらけている。わたしもようよう白髪があるが、あんなに綺麗に散らばっている白髪は初めて見た。
そして持ち物には大変なこだわりがあるという。S字っぽいツボ押しが机の下から出てきたり、「ボディメイクシート」なるものが椅子の上に置いてあったり。
これね。

ボディメイクシートスタイル(Body Make Seat Style)ブラック

ボディメイクシートスタイル(Body Make Seat Style)ブラック

 

そして極め付けとして超がつくほど特殊なキーボードをノートPCにつけているのだ。うね〜んと盛り上がったキーボードだ。同じ型を載せるとさすがにこれを書いている人間の身元がバレてしまうためあえて全然違う形のを載せておくが、こんなのに近い形のものがノートPCにひっついているのだ。こいつをぐんにゃりと曲げた感じ、と言っておこう。

だが彼は会議などでノートPCを持って行く際キーボードはお留守番にさせている。しょっちゅう会議などで席を外しているためいないことがほとんどだが、わたしの隣にはこのキーボードだけがいつも鎮座している。

あまりに特殊なキーボードのためわたしの席に来た人たちは皆必ず驚いて帰る。
さすがにわたしも気になってくるので とうとう本人に訪ねた。なかなか特殊なキーボードですねぇと。やはり盛り上がっている方が良いのですかと。

すると予想外な答えが返ってきた。
「わたしは人間工学に基づいたものを使いたいと思ってましてね(以下云々かんぬん)」

人間工学!
そうか、よう観察していると変わったモンをお持ちでありますなぁと思っていたら全ては「人間工学に基づいたもの」であり、本人から及第点が出たものたちであるのか。
なるほど、あの尋常じゃない忙しさ満載の課長を支える全ての原点は「人間工学」なのだ。
人間工学に基づきビジネス経験を重ねた結果、早い出世を成し遂げた、そうに違いない。

そして中途組のためキャラが違うというのもあるかもしれないが、雰囲気そのものが「謎の人」なのだ。やはり企業カラーというのはあるらしく、他企業の社員同士が一緒になったとき「あこいつ他社の人間だ」と一発でわかってしまう。実際、会社のビルでもうちの会社の人間と他社だとかなり雰囲気が違うのがわかり、エレベーターで降りる階を見て「やっぱりうちの会社の人じゃなかった」と大抵当たる。
会社が違うからというだけでなく恐らく本人の性格もあるのだろうが、一言で言えば「私生活がまるで見えてこない」と言わざるをえないいわゆる「謎の人」なのである。

もしわたしが今の上司の下で出世をしたいと思ったらまずは「人間工学」に基づき持ち物を選定するところから始めるのだろう。
そして頭にはツイストパーマをかけ、どうにかして「謎の人」の雰囲気を出す訓練をしなければならない。
あ、一つ今から真似できることがあった。本人は課長ではあるものの直属の部下にも、それもどんな新入社員にでも必ず敬語を使うのだ。タメ語を使っているところを一回も見たことがない。そして一人称は必ず「わたし」。

敬語を使い「わたし」と呼ぶ。これはやっても違和感ゼロだが、やれ人間工学やらやれツイストパーマやらの真似をしてしまうと確実に社内で噂になってしまう。なんだあれただの真似っこじゃねーか、あの人のことが好きなのではないか、そういう噂もたつだろうが、一番可能性が高いのは「…あの人のところに近づくのはやめよう」だろう。
たまに課長のことを「あの人喋ると全然いい人なんだけどなんか最初近づきづらい」という人に遭遇する。うんなんかわかる気がする。
仮にもし真似が成功しあわよくば管理職にまでなれた暁には、出世と引き換えにわたしのところには誰も寄ってこないという悲惨な末路が待っていると思われる。もちろん、嫌でも似てきてしまった場合も悲惨な末路が待っている。
一応誤解のないように補足しておくが、人間工学に基づいた持ち物やツイストパーマ、それにミステリアスな雰囲気は本人だから似合っているのであって、ただでさえ滑稽な姿格好のわたしがまるまるパクったところで失笑される+周りから人がいなくなるのは必至だ。
ただし頭脳だけは似たい。というかパクリたいくらいだ。頭脳だけ似れば言うことなしだ。

そういえば一回「ボディメイクシート」が置いてある状態で課長の席に座ったことがあるのだが、これがまたわたしのシリに全然フィットしない。
自分のシリがでかいだけなのかもしれないが、形が人それぞれに変わっていった結果こうなったのだろう、多分。
だいぶ上で書いた会社の人との会話に戻るが、椅子が合わなかったということを話したらこう返された。

「その椅子がアヘラさんにフィットしたとき、きっとアヘラさん自身が人間工学に基づいた人間になった、ということになるんだと思いますよ(笑)」

わたし自身が人間工学に基づいてしまったらもはや末期だ。これを書いている今ですら全く理解できていない。改めて思うが「人間工学に基づく」というのはなんでもかんでも使える言葉ではないのだろう。

そういうわけで、「出世をしたければ、ボスの猿真似をしろ」というのが常識なのはアメリカのビジネス界での話であって、ここ日本でやるとするなら真似をする対象の上司がいるのかどうかを探し自ら判断をするのが大前提となると思われる。それを踏まえた上で「上司の真似をして出世する」のか「オリジナルで出世する」のかが意識せずともわかってくる。自ずと自然体で決断を下した上でビジネスライフを送ることになるのだろう。

会社の人と別れ際に言われた。
「今、全社をあげて働き方改革が進んでいるじゃないですか。それならばアヘラさんからやりましょうよ、『人間工学に基づいた働き方』を全社へ広めていくということを。次年度の業績目標として掲げましょうよ!」
…もうわけがわからない。だからなんだよ「人間工学」って。

なお余談だが、恋愛系のスピリチュアルで「持ち物や仕草、服装を変えたくなったときは近々恋人ができる予兆。自ら運命の人を引き寄せる」なんてよくわからないことが言われている。が、「持ち物などを変えたくなったときは出世欲がでてきた証拠」という意味の場合もあるってことだ。ただし猿真似に限る。